ヤングケアラーとは何か──家族のケアを担う子どもたちへの理解と支援
「ヤングケアラー」という言葉を聞いたことはありますか。本来は大人が担うべき家族の世話を、日常的に引き受けている子どもや若者のことを指します。「うちには関係ない」と思われるかもしれませんが、厚生労働省の調査では中学2年生の約17人に1人がヤングケアラーに該当するとされており、決して珍しいことではありません。この記事では、ヤングケアラーとは何か、どんな影響があるのか、そして周囲の大人や地域がどう関わればよいかを整理します。
「ヤングケアラー」──家族のケアを担う子どもたち
ヤングケアラーとは、家族の介護・看護・家事・育児などを日常的に担っている18歳未満の子ども(広義では18〜25歳の「若者ケアラー」を含む場合もある)のことです。ケアの内容はさまざまで、たとえば次のようなケースがあります。
- 親が身体・精神・知的障がいを持っており、日常的なサポートをしている
- 祖父母の介護のために料理・入浴介助・通院付き添いをしている
- アルコール依存症や精神疾患を抱える親の代わりに、幼いきょうだいの世話をしている
- 外国にルーツのある家庭で、親の通訳・書類手続きを一手に引き受けている
- ひとり親家庭で、親が仕事に出ている間の家事全般を担っている
厚生労働省・文部科学省の2021年度合同調査では、中学2年生の5.7%(約17人に1人)、高校2年生の4.1%がヤングケアラーに相当するという結果が出ています。富士見市や志木市・朝霞市といった東武東上線沿線の都市部でも、核家族化・共働き化が進む中で同様の状況が起きていると考えられます。
子どもへの影響──学校・友人関係・将来
ヤングケアラーの問題が深刻なのは、子どもの成長や学習の機会が知らず知らずのうちに削られていくからです。具体的には次のような影響が報告されています。
- 学業への影響:宿題をする時間が取れない、授業中に眠くなる、欠席が増えるなど、学力への直接的な影響が出やすい
- 友人関係・課外活動:部活や放課後の約束を断り続けるうちに孤立しやすくなる
- 精神的な負担:「自分が家族を支えなければ」という責任感から、慢性的なストレスや不安を抱える子が少なくない
- 進路への影響:高校・大学への進学を諦める、あるいは就職後も低賃金のまま家庭を支え続けるケースがある
- 自己肯定感の低下:自分の気持ちや夢を後回しにし続けることで、自己評価が下がりやすい
とくに不登校や学習の遅れの背景に、ヤングケアラーとしての疲弊が隠れているケースも報告されており、表面的な「行き渋り」だけを見ていると本質を見逃すことがあります。
「言えない」「気づかれない」──見えにくさの理由
ヤングケアラーの問題がなかなか表に出てこない理由のひとつは、当事者の子ども自身が「これが当たり前」と思っていることです。物心がついたときから家族のケアをしていれば、それが「普通の家庭」だと認識しており、「自分はヤングケアラーだ」と気づかないまま過ごしているケースがほとんどです。
また、次のような心理的ハードルもあります。
- 「家のことを話したら親が恥をかく」「家族の秘密を守らなければ」という忠誠心
- 「誰かに言っても何も変わらない」という無力感
- 「自分がやらなければ誰もやらない」という責任感の強さ
- 行政や支援者に関わられることへの家族の拒否感・不安
周囲の大人が気づくサインとしては、「宿題をよく忘れる」「いつも疲れた様子だ」「放課後に急いで帰る」「きょうだいの世話を頻繁にしている」「親の代わりに学校の電話に出る」などがあります。ひとつひとつは小さなサインでも、組み合わさると気になる場合があります。
周囲の大人・地域にできること
ヤングケアラーへの支援で大切なのは、「助けてあげる」という上から目線ではなく、「その子の生活や気持ちに関心を持ち続ける」という姿勢です。できることを状況ごとに整理すると、こうなります。
- 気づく・声をかける:「最近しんどそうだね、何かあった?」と気にかけるだけでも、子どもにとって「見てくれている大人がいる」という安心感につながります
- 否定しない・急かさない:「早く相談すればよかったのに」「なんで言わなかったの」という言葉は逆効果。話してくれたこと自体を肯定する
- 家族全体を支援につなぐ:子ども個人の問題ではなく、家族システムの問題です。親や祖父母が使える介護・医療・障がい福祉のサービスを一緒に探すことが根本的な解決につながります
- 子ども食堂・居場所を紹介する:安心できる食事の場や、大人に気軽に話せる居場所が、小さな息抜きになることがあります
学校の先生や部活の顧問、塾のスタッフ、地域のボランティアなど、子どもと日常的に関わる大人が「気になる子」に声をかけ続けることが、早期発見の鍵になります。ふじみ野市・川越市・坂戸市・東松山市など埼玉県西部の地域でも、学校と地域が連携してヤングケアラーへの対応が進んできています。
富士見市・東上線沿線で相談できる窓口
ヤングケアラーに関する相談先として、以下の窓口が活用できます。
- 学校のスクールソーシャルワーカー(SSW):家庭環境・福祉的課題に専門的に対応できる学校内の相談員。富士見市・志木市・新座市などの公立学校に配置が進んでいます
- 市のこども家庭センター・子ども相談室:子ども本人・保護者どちらからでも相談可能。必要に応じて介護・障がい福祉の担当部署につないでもらえます
- 社会福祉協議会:地域の生活困窮や介護に関する相談窓口として機能しており、ヤングケアラーを含む複合的な相談にも対応しています
- ヤングケアラー相談窓口(埼玉県):埼玉県ではヤングケアラー支援に力を入れており、県の相談窓口やコーディネート機能が整備されています
- 教育援護会(富士見市委託の教育相談窓口):「どこに相談すればいいか分からない」「子どもの学習が心配だが家庭の事情が複雑で…」という段階でも、まずお気軽にご連絡ください。適切な窓口へのつなぎも行います
編集部からのメッセージ
ヤングケアラーの子どもたちは、「助けてほしい」と言えないまま、誰にも気づかれずに頑張っています。「自分でできています」という顔の裏に、どれほどの疲れと孤独があるか、想像してみてください。
地域の一員として、「気になる子」に声をかけること、その子の家族が利用できるサービスの情報を届けること——そういった小さなアクションの積み重ねが、子どもの選択肢を守ることにつながります。「うちには関係ない」ではなく、「地域の子どもを一緒に見ている大人が近くにいる」という空気が、東武東上線沿線の街づくりの底力になると私たちは考えています。
教育援護会について
本サイト「教育援護会」は、埼玉県富士見市を拠点に教育・子育てのサポートを行うNPO法人です。富士見市から教育相談窓口の委託を受けており、不登校サポート・学び直し・独自奨学金・地域ボランティアを通じて、お子さま・保護者・地域に寄り添う活動を続けています。
- 🌱 不登校生サポート・保護者相談
- 📘 学び直し・高卒サポート
- 💴 独自奨学金制度・教育ローン
- 🎵 チャリティコンサート(収益は奨学金活動へ)
- 🧹 地域ボランティア活動
子育てのご相談、ボランティア参加・寄付支援のご質問は、お問い合わせフォーム または kyouikuengokai@gmail.com までメールでどうぞ。
