「お兄ちゃんは行ってるのに」——きょうだいが不登校のとき、家族が少しラクになるための考え方
「上の子は毎日学校に行っているのに、下の子はもう3週間休んでいる——どうすれば家の中がうまく回るのか」。そんな声を、相談窓口でよくお聞きします。不登校の子を抱えながら、もう一人(または複数)の子どもとも向き合う毎日は、保護者にとって本当に消耗することです。
どちらの子にも平等に接しようとすればするほど、自分が追い詰められていく——そんな感覚を持っている方も多いのではないでしょうか。このコラムでは、「きょうだいの片方が不登校」という状況が家族それぞれにどう影響するかを整理しながら、少しだけラクになれる考え方をご一緒に見ていきたいと思います。
登校しているきょうだいの気持ち
毎朝学校に行くきょうだいは、一見「影響を受けていない」ように見えても、家の中の変化を敏感に感じ取っています。
- 「自分だけ学校に行かなくていいの?」という不公平感——これは責めているわけではなく、子どもとして自然な疑問です。悪気がなくても口に出ることがあります。
- 「お父さん・お母さんはあの子のことで頭がいっぱい」という寂しさ——親が必死になればなるほど、もう一方の子は「自分は後回しにされている」と感じやすくなります。
- 「うちでは言えない」という抑圧——家の中が緊張した雰囲気のとき、登校している子は自分の悩みや不満を持ち込みにくくなることがあります。その子自身もSOSを出せずに疲弊していることがあります。
登校しているきょうだいも、それなりに家の状況を受け止めながら生活しています。その子の話を聞く時間も、できる範囲で確保できるといいかもしれません。
不登校の子本人が感じているプレッシャー
家にいる子どもは、「きょうだいは行っているのに、自分は…」という比較のまなざしに非常に敏感です。これは保護者が口にしなくても、感じ取ってしまうことが多い。
たとえば、朝にきょうだいが準備して出かけていく音、帰ってきて「今日こんなことがあった」と話す声——これだけで、不登校の子には「自分はここにいていいのか」という気持ちが湧き上がることがあります。責められているわけでもないのに、比較される感覚は想像以上に重くのしかかります。
その苦しさは、さらに外に出る意欲を削いでしまうことにもつながります。「きょうだいを見て焦る」のではなく「きょうだいを見て自分の小ささを感じる」という構図に陥ることもあります。
保護者ができること——「公平」より「それぞれ」
「子ども全員に同じように接しなければ」と思うほど、どこかで無理が出ます。ここで考え方を少し変えてみると、少しラクになることがあります。
- 「公平」ではなく「それぞれに必要なもの」を——不登校の子には今、安心できる場所と時間が必要です。登校している子には、自分の話を聞いてもらえる時間が必要かもしれません。同じ量ではなく、それぞれが必要としているものを渡す、という発想が助けになります。
- きょうだいが比べてきたとき——「なんであの子は学校行かなくていいの?」と言ってきたときは、叱るよりも「そう思うよね、不思議だよね」と一旦受け止めてから、「あの子は今、体と心がすごく疲れていてね」と伝える方が、きょうだい間の関係を守ることにつながります。
- 不登校の子の前でのきょうだいの話題——学校の話を完全に封印する必要はありませんが、比較を含む言い方(「お姉ちゃんは○組になったって」「お兄ちゃんは今日部活あるって」など)は、不意に傷つける言葉になることがあります。
やってしまいがちな声かけと、その影響
善意から出た言葉でも、きょうだい間の空気を難しくしてしまうことがあります。
- 「お兄ちゃんは毎日頑張ってるよ」——不登校の子の前でこれを言うと、「自分は頑張っていない」と受け取られることがあります。
- 「○○ちゃんはちゃんと行けてるのにね」——悪意がなくても、比べていることは伝わります。
- きょうだいに様子を「報告させる」——「今日、あの子どうだった?」ときょうだいに聞かせると、子どもに監視役を担わせることになり、きょうだい間の関係が難しくなることがあります。家族の中で板挟みにしてしまう構図は、できるだけ避けたいところです。
- 「あなたもそのうち…」という比較の期待——きょうだいを引き合いに出した形で登校を促すと、プレッシャーとして働くことがほとんどです。
相談できる場所
「きょうだいのことも心配だし、不登校の子のことも心配」という重なった悩みを一人で抱えようとするのは、本当に大変なことです。誰かに話すだけで、少し整理されることがあります。
- スクールカウンセラー——不登校の子どもだけでなく、「きょうだいへの影響が心配」という保護者の相談も受け付けています。担任または教頭を通じて予約できます。
- 教育支援センター(適応指導教室)——富士見市・ふじみ野市・志木市・川越市・新座市など各市に設置されており、保護者だけの相談も可能です。
- 市の教育相談窓口——朝霞市・和光市・坂戸市など東武東上線沿線の自治体にも相談窓口があります。
- 教育援護会の相談窓口——富士見市から教育相談窓口の委託を受けている当法人でも、「きょうだいのバランスをどう取ればいいかわからない」という段階からご相談をお受けしています。
編集部からひとこと
「一人ひとりにちゃんと向き合わなければ」と思うほど、保護者自身がしんどくなっていく——そういう状況に多くの方が置かれています。
「公平にできていない」という罪悪感を少し横に置いて、「今日、それぞれの子と少しだけ話せた」をひとつの基準にしてみてもいいかもしれません。きょうだいそれぞれが「自分のことを見てもらっている」と感じられること——それが、家族全体の安定に少しずつつながっていきます。
完璧にやろうとしなくていいです。一人で全部抱えずに、誰かと話してみてください。
教育援護会について
本サイト「教育援護会」は、埼玉県富士見市を拠点に教育・子育てのサポートを行うNPO法人です。富士見市から教育相談窓口の委託を受けており、不登校サポート・学び直し・独自奨学金・地域ボランティアを通じて、お子さま・保護者・地域に寄り添う活動を続けています。
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