「医療的ケア児」ってご存知ですか?――家庭・学校・地域でどう支えるか

たんの吸引や経管栄養、人工呼吸器の管理など、日常的に医療的なケアを必要としながら生活する子どもたちがいます。「医療的ケア児」と呼ばれるこうした子どもたちは、地域の中で決して珍しい存在ではありませんが、その暮らしぶりや必要な支援については、まだあまり知られていないのが実情です。富士見市・ふじみ野市・志木市・川越市・三芳町・新座市など東武東上線沿線の地域でも、医療的ケア児とその家族を地域全体で支える仕組みづくりが少しずつ進められています。今回は、医療的ケア児とはどのような存在か、そして家庭・学校・地域がそれぞれどう関わっていけるかを考えます。

医療的ケア児とは、どんな子どもたちか

医療的ケア児とは、人工呼吸器の管理、たんの吸引、経管栄養(口から食事を取ることが難しく、チューブなどを通じて栄養を摂る方法)といった医療的な生活援助行為を、日常的に必要とする子どものことを指します。医療技術の進歩によって、以前であれば命を守ることが難しかった子どもたちが、退院後も自宅で家族と暮らせるようになった一方で、家庭には夜間を含めた継続的なケアの負担がのしかかります。知的障害や身体障害を伴う場合もあれば、そうでない場合もあり、一人ひとりの状態や必要なケアの内容はさまざまです。2021年には「医療的ケア児及びその家族に対する支援に関する法律」が施行され、国や自治体、学校の設置者に対して、医療的ケア児が保育・教育を受けられる体制を整える努力義務が課されるようになりました。

家庭が直面しやすい負担

  • 夜間も含めたケアが必要なため、保護者、特に主に世話をする人の慢性的な睡眠不足や疲労が蓄積しやすい
  • きょうだいがいる家庭では、ケアに時間を取られる分、他の子どもと過ごす時間が限られてしまうことがある
  • 預け先が限られ、保護者が仕事を続けることや、自分の時間を持つことが難しくなりやすい
  • 通園・通学の送迎や、園・学校側との連携調整に手間と時間がかかる
  • 「うちだけで頑張らなければ」という孤立感を抱えやすい

こうした負担は、ケアそのものの大変さだけでなく、周囲の理解や支援の少なさによって、より重くなってしまうことがあります。

学校・地域でできる具体的な支え方

近年、公立の小中学校でも、看護師を配置してたんの吸引などのケアに対応できる体制を整える動きが広がっています。医療的ケア児が地域の学校に通えるかどうか、どのような支援体制があるかは自治体や学校によって異なるため、就学を控えた家庭は早めに教育委員会や学校に相談し、見学や面談を通じて具体的な受け入れ体制を確認しておくことが大切です。また、学校生活の中では、他の子どもたちが医療的ケアについて自然に理解できるよう、担任や養護教諭が場に応じて説明を行うことも、子ども同士の関わりを円滑にする助けになります。地域でできることとしては、放課後の預かりや一時的な見守りに対応できる福祉サービスの情報を身近な人同士で共有すること、また子ども食堂や地域の集まりなどで、医療的ケア児とその家族が気兼ねなく参加できる雰囲気をつくることなどが挙げられます。

ありがちな誤解

「医療的ケアが必要」と聞くと、常に病院にいるような重篤な状態を思い浮かべる方もいますが、実際には日常のケアさえ確保できれば、通園・通学し、他の子どもたちと同じように学び、遊ぶことができる子どもが数多くいます。また、「専門知識がないと関われない」と身構えてしまう周囲の大人も少なくありませんが、必要なのは専門的な医療知識そのものよりも、その子の状態を知ろうとする姿勢と、家族だけに負担を抱え込ませない周囲の理解です。特別扱いをしすぎることも、逆に距離を感じさせてしまう場合があるため、本人や家族の意向を聞きながら、無理のない関わり方を探ることが大切です。

頼れる窓口・つながり方

医療的ケア児とその家族への支援については、自治体の福祉担当窓口や保健センター、通院先の医療ソーシャルワーカーなどが相談先になります。就学に関する相談は、お住まいの自治体の教育委員会が窓口です。制度や利用できるサービスは自治体ごとに異なり、また年度によって内容が更新されることもあるため、最新の情報は必ず各自治体の公式窓口でご確認ください。教育援護会でも、富士見市から委託を受けた教育相談窓口として、就学や学校生活に関する保護者の方からのご相談をお受けしています。制度の細かい利用方法がわからない、といった段階でのご相談でも構いません。

編集部からのメッセージ

医療的ケア児とその家族は、日々のケアと向き合いながら、他の家庭と同じように子どもの成長を願い、地域の中で暮らしています。特別な存在として遠ざけるのではなく、「同じ地域に暮らす一人の子ども」として自然に関わろうとする姿勢が、家族の孤立を防ぐ第一歩になります。制度の整備とあわせて、こうした地域の理解の輪が少しずつ広がっていくことを願っています。

教育援護会について

本サイト「教育援護会」は、埼玉県富士見市を拠点に教育・子育てのサポートを行うNPO法人です。富士見市から教育相談窓口の委託を受けており、不登校サポート・学び直し・独自奨学金・地域ボランティアを通じて、お子さま・保護者・地域に寄り添う活動を続けています。

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